『聖句解説』
「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである」
(ルカによる福音書 2:11)
私は9年前の冬、前の園長・村松偕子と共にイスラエルの聖地巡礼に出掛けました。12月24日の午後、テル・アヴィヴの空港に着いてバスでベツレヘムに向かいました。ベツレヘムに近づくと、延々と連なる高いコンクリートの壁が目に入りました。ベツレヘムはパレスチナ自治政府が管轄する地域にあるため、イスラエル領からはこの壁を越えて行かなければならないのです。
境界線でバスは一たん止まり、イスラエルの警備兵の検問を受けました。これは間もなく済んでバスは動き出し、ホテルに着いて旅装を解き、その晩は真夜中の礼拝、翌日は「良い羊飼いの野」への訪問があり、それぞれに感銘深いものがありました。しかし、私にはこの日越えてきた壁のことが刺さった棘のように心に残りました。この日お生まれになったイエス・キリストはこのような壁を打ちこわすためにおいでになったのではないか、と思ったのです。
「実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し…」(エフェソの信徒への手紙2:14)
イエス・キリストがお生まれになってから2020年余りが経ちましたが、私たち人類一人一人を隔てる壁は無くなったでしょうか。無くならないまでも少しは低くなったでしょうか。「ベルリンの壁」は1989年に打ちこわされましたが、南北朝鮮の軍事境界線、アメリカ・メキシコの国境など、多くのところに壁は存在し、人々を苦しめています。クリスマスにあたってこのことを深く考え、真の平和のために祈りたいと思います。
(顧問 村松 武司)